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超伝導工学分野

超伝導を様々な分野へ応用するための研究を展開

電気抵抗がゼロであること、高磁場を発生できることという超伝導のメリットを上手に活用できれば、電気工学の様々な分野におけるイノベーションが期待できます。

我々の研究室では、超伝導材料内部の目に見えない電磁現象およびその発現としての電磁特性の解明・把握に立脚し、超伝導を使ったエネルギー効率が高く環境に優しくコンパクト・大容量な電気機器の実現、常伝導では実現困難な医療機器や先端科学研究用機器の実現などに向けた研究を展開しています。

研究室見学のご希望等は、雨宮(profアasl.kuee.kyoto-u.ac.jp、アは@に変換)までお寄せ下さい。

教員

雨宮 尚之 ( Naoyuki AMEMIYA )

雨宮 尚之教授(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

超伝導体の電磁現象(交流損失、安定性、磁界精度への影響)、超伝導のエネルギー応用(超伝導ケーブルなど超伝導電力機器、加速器駆動未臨界炉用加速器な ど)の基盤技術、超伝導・高磁界の医療・バイオ応用(医療用加速器、NMR/MRI用マグネット、ドラッグデリバリーなど)の基盤技術

連絡先

桂キャンパス A1棟 1階118号室
TEL: 075-383-2220
FAX: 075-383-2224
E-mail: profアasl.kuee.kyoto-u.ac.jp (アは@に変換して下さい)

研究テーマ・開発紹介

超伝導による革新的がん治療用重粒子加速・照射装置の実現に向けた研究

重粒子線照射がん治療は、炭素イオン等の重粒子を高速に加速し照射することにより、周辺の健全な組織を温存しつつがん細胞を殺傷するがん治療法で、QOL (Quality of Life)に優れた治療法として注目を集めています。荷電粒子である重粒子を加速、照射するために磁界によるローレンツ力で誘導、制御を行います。超伝導を使ったマグネットで大きな磁界を発生すれば大きなローレンツ力を作用でき、装置のコンパクト化、可変方向照射を可能にするガントリーの実現などにつながります。我々の研究室では、重粒子線加速・照射装置に超伝導を応用するための基礎的研究を進め、公的研究機関や民間企業と共同で革新的がん治療用重粒子加速・照射装置実現に取り組んでいます。具体的には、加速器用マグネットにおいて重要な多極成分磁界の精度に着目して、高温超伝導ダイポールマグネットの磁界精度の実験的評価や高温超伝導ダイポールマグネットにおける多極磁界成分の理論解析を行っています。

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(高温超伝導ダイポールマグネットにおいて磁化電流が作る付加的磁界の解析例)

高温超伝導テープ線を用いた医療・バイオ分析用マグネット(NMR/MRI マグネット)実現に向けた研究

NMR装置は、たんぱく質の構造解析などに用いられる装置ですが、この装置の分解能を向上させるためには、極めて空間的に均一で、かつ、時間的に安定な高磁界を発生する必要があります。このような磁界は常伝導体(銅やアルミ)を使った電磁石や永久磁石では発生できず、従来も金属系の低温超伝導線を使ったマグネットにより発生していました。NMR装置の分解能をさらに向上させるためには、さらなる高磁界化が必要で、世界では30 T超の高磁界を用いた1.3 GHz NMRの検討が行われています。30 T超の高磁界では金属系の低温超伝導線は超伝導性を示さなくなってしまうため、このような超高磁界NMRマグネットの実現には、液体ヘリウムで低温の冷やすと高磁界中でも優れた超伝導性を示す高温超伝導線の利用が有効とされています。しかし、現在の高温超伝導線のほとんどはテープ形状をしており、テープ面内に流れる遮蔽電流が発生磁界の空間的均一性や時間的安定性を損なう可能性を我々は指摘し、高温超伝導コイルが発生する磁界の発空間的均一性や時間的安定性について実験、理論両面から研究しています。この研究は、NMRマグネット以外にも、高温超伝導テープ線を使って医療用のMRI用マグネットを開発する際にも役に立つものです。

超伝導による低環境負荷・コンパクト・大容量電力伝送・利用システム実現に向けた研究

超伝導を応用した送電ケーブル、事故電流限流器(電力系統に事故時に流れる過大電流を抑制する機器)などの電気機器を用いれば、効率が高く低環境負荷で、コンパクト・大容量なことから都市部への送電に有利な送電システムや電力の利用システムを実現することができます。

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(超伝導ケーブルの断面モデル)

超伝導体の交流損失について実験的研究

無損失(極低損失)が売り物の超伝導も交流で用いると交流損失と呼ばれる損失を発生しています。実用的な超伝導体である第二種超伝導体の中に量子化して侵入した磁束がピン止め力という力に抗して動くことなどによってこの交流損失は発生します。この交流損失の低減が超伝導の電気エネルギー分野への応用の鍵です。超伝導の交流損失の研究において、次項に述べる電磁現象シミュレーションも有力なアプローチですが、やはりそれを実験を通して調べることも重要です。我々の研究室の「交流損失測定システム」は、交流損失を測定する装置としては世界でもっとも完成度が高いシステムのひとつで、交流の磁界のもとで交流の電流を輸送する超伝導線内部で発生する交流損失を測定したり、超伝導ケーブルのモデル導体の交流損失を測定したりすることができます。この装置を用いて交流損失を実際に測定し、電磁現象シミュレーションによる交流損失発生メカニズムの解明とあわせて、それを低減する技術の研究に取り組んでいます。

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(交流損失測定システム)

超伝導内部の電磁現象シミュレーション

超伝導体内部のミクロスケールの電磁現象は、交流損失発生の原因であり、また、加速器用マグネットやNMR, MRI用マグネットにおいて重要な磁界精度を損なう要因ともなります。しかり、このミクロスケールの電磁現象を直接実験的に測定することは不可能です。そこで我々の研究室では、適切な理論モデルの基づいて計算機シミュレーションを行うことにより、超伝導体内部の電磁現象を可視化し解明する研究を進めています。この分野の研究では、雨宮が1998年にPhysica C誌に公表した論文が先駆的仕事として、多くの研究者の論文で引用される高被引用度論文となっています。 具体的には、マックスウェルの方程式を支配方程式とし、それを超伝導体の電磁特性を表現する構成方程式と組み合わせて解き、超伝導体内部の電流・磁束分布の時間変化をシミュレーションします。

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(電磁現象シミュレーション用クラスタ型計算サーバ)