先輩・卒業生からのメッセージ

本学電気電子工学科を卒業し、大学院に在学中、もしくは、社会で活躍中の先輩達の声を掲載しています。

星野 光 さん

hoshino.jpg平成24年 電気電子工学科卒業
平成26年 工学研究科電気工学専攻修士課程修了
平成29年 工学研究科電気工学専攻博士後期課程修了
平成29年 (一財)電力中央研究所 入所
現在 兵庫県立大学 工学研究科電気物性工学専攻 助教

私は電気工学専攻で修士課程と博士後期課程を修了しました.博士進学を決めたのは修士1回生の時でした.学部時代はどちらかといえば学問より部活動に力を注ぎ,博士進学など全く考えていませんでした.しかし,4回生での研究室配属が大きな転機となりました.それまでは,正解として示される講義の知識を習得する以上のことは考えていませんでした.しかし,研究室で生の探求活動に触れたことで,すでに体系化された知識の背後にも人間の迷いや決断があり,不完全な部分もあるのだろうと考えるようになりました.そうすると研究が身近なものに感じられ,自分もそこに加わりたくなりました.修了後の就職への不安は当然ありましたが,気づくのが遅かった分,あと2年しか研究ができないのは嫌だという気持ちの方が強くなったのを覚えています.

修了後の職に関しては巡り合わせなので何とも言えませんが,博士課程で身に着けた「ものの考え方」があれば社会でやっていけると信じて,ある程度は楽観視することが重要だと思います.私の場合,修了後,電力中央研究所の社会経済研究所にお世話になりました.そこでの取り組みは,博士の研究テーマと必ずしも関連は強くありませんでしたが,課題を抽出して解決し,それをまとめるという一連のプロセスを散々練習したため,新たな仕事に取り組む際の戸惑いはありませんでした.むしろ,ミクロ経済学や一般均衡理論の中に,自分が博士課程で検討したのと類似の数理構造があり,そのことを経済学者の同僚に面白がってもらえたことから,これまで培ってきたものが想像以上に広く活用できるに違いないという自信になりました.また,海外の電力会社へのヒアリングを任された際には,博士課程での在外研究(私の場合香港に一か月滞在しました)の経験が活きた実感がありました.その職場で研究者として全うすることも魅力的でしたが,自分の視野を広げ,考え方の軸を作ってくれた教育の現場に参加したいという思いが捨てきれず,現在の職に転じました.

博士課程での訓練は大変でしたが,その分,社会でやっていける実力がついたと感じています.博士課程では研究テーマと向き合うことも大事ですが,それ以上に,研究へのアプローチの仕方を自分の考え方として蓄積することが,将来,自分自身の道を切り拓くことにつながります.進学の時点では将来の道は見えません.まずは覚悟を決めて飛び込むのも悪くないのではないかと思います.

松尾 圭祐 さん

matsuo.jpg 平成25年 電気電子工学科卒業
平成27年 電気工学専攻修士課程修了
現在 日本製鉄株式会社 名古屋製鐵所 設備部 制御技術室 勤務

私は平成27年3月に電気工学専攻を修了し,現在は日本製鉄株式会社に勤務しております.

学部時代は電気電子工学科に所属し,電気,電子,情報と幅広い分野の講義を受講しました.会社に入ってから他大学出身の方と話をしていても,京都大学の電気電子工学科ほど幅広く科目を受講する学科は少ないと感じます.実際の製造業のプラントでは,講義で学ぶ理論や知識のすべてが活用されているといっても過言ではありません.学部,大学院の講義を通じてこれらの分野に対して体系的に学ぶことができたことが,現在の業務に役立っており,講義の有難みを感じています.

研究室選びの際は先生の講義内容と,実際に研究室を訪問してお話を伺い,自動制御の分野に決定しました.研究では,自分で理論を導くことの難しさに苦労しましたが,最終的に自分の力で定理を導出できたことはとても自信になりました.また,先生方や先輩方も素晴らしい方々ばかりで,自分もこういう人になりたい,と思える人に出会うことができました.研究室の先輩方のような考え方ができるようになることを,今も自分の技術者としての大きな目標としています.

同じ研究室配属となった同期とは研究がうまく進まないときや論文執筆で大変な時も相談し励まし合ってきました.今も毎年集まるほど仲が良く,何でも相談できる大切な友人となっています.研究室を通じてこのような出会いが得られることが,電気電子工学科,電気・電子系専攻の魅力の一つだと思います.

現在私は,名古屋製鉄所で設備エンジニアリング業務や制御開発業務に取り組んでおります.製鉄プラントでは,電気電子分野の最新技術も数多く導入されております.少子化や世代交代を背景とした,プロセス自動化へのニーズの高まりを受け,AIをはじめとした自動化関連技術の導入も積極的に行っています.自動化に関しては,数レベルの高い精度が要求されることと,制御改善の効果が大量生産により一段と大きくなることから多くの自動制御理論も適用されています.まだ入社5年目ですが,世界最大級の圧延用モータの更新や鋼鈑形状制御への新制御適用なども経験し,非常に充実した毎日を送っております.

栗山 豊 さん

kuriyama.jpg平成27年 電気電子工学科卒業
平成29年 電子工学専攻修士課程修了
現在 西日本旅客鉄道株式会社 勤務

【現在の職務内容】
私は現在,西日本旅客鉄道株式会社にて,魅力あるまちづくりを実現するための鉄道新線建設,新駅設置,駅改良,連続立体交差化などの大規模プロジェクト工事を担う部署で,電気設備(主に列車制御にかかわる信号システム)の設計業務を担当しています.

【修士課程進学の動機】
学部の電気電子工学科では特定の分野にこだわらず,幅広い分野について学んできました.講義や研究室紹介などの機会で,最先端の技術や,まだまだ未解明な物理現象が多くある事を知り,深く追求してみたいという気持ちが強くなり,大学院進学を決めました.

【修士課程に進学して良かったところ】
■最先端の技術・物理にどっぷりつかることができる
自分の興味ある内容に大学院在籍時代ほど時間・労力を費やすことができる機会は社会に出ると多くありません.その上,新技術の開発や未解明の物理現象の解明に携わることができる魅力があります.
■周りの環境(人・設備)の充実さ
大学院では自らが主体となって研究をおこなっていきますが,困ったときには,知識・経験豊富な先生方,先輩方と多くの議論を重ねながら進めていきます.議論の場では様々な観点から物事を考えることの重要さに何度も気付かされました.また,充実した実験設備を思う存分使い,やりたいことができる環境で研究に集中することができました.
■研究に取組む姿勢は仕事でも活かせる
私の研究テーマは,『抵抗変化を利用した低消費電力不揮発性メモリの基礎研究』ということで,謎の多い物理現象である抵抗変化のメカニズム解明を目的としていました.その目的を達成すべく,実験データに基づく仮説検証を積み重ね,一連のPDCAサイクルで研究に取組んでいきました.この取組み方は就職してからも非常に重要だと日々感じています.一筋縄ではいかない仕事も多くあり,大学院在籍時代に培った姿勢は社会でも大いに活かせると思います.

【メッセージ】
現在の仕事は,学生時代の研究テーマや知識等を直接的に活かせる仕事ではありませんが,大学院在籍時代に得た幅広い経験が非常に役立っています.自分の興味・探求心に任せて最先端の技術・物理に没頭し,仲間との研究生活をしてみてはいかがでしょうか.その経験を糧に社会で活躍していきましょう.

小林 拓真 さん

kobayashi.jpg 平成25年 3月 大阪大学基礎工学部電子物理科学科 卒業
平成27年 3月 京都大学工学研究科電子工学専攻修士課程 修了
平成30年 3月 京都大学工学研究科電子工学専攻博士後期課程 修了
(日本学術振興会特別研究員DC1)
平成30年 4月 京都大学工学研究科電子工学専攻 特定研究員
平成30年 8月 東京工業大学科学技術創成研究院フロンティア材料研究所 研究員
令和元年10月 Friedrich-Alexander-Universität Erlangen-Nürnberg Guest Researcher
(日本学術振興会海外特別研究員)

【メッセージ】
私が京大の博士課程に進学して特に良かった,と思うのは以下の三点です.

“オリジナリティのある仕事に取り組める”
独創的な仕事に取り組める点(また,その進め方を学べる点)は,博士課程進学の最大の醍醐味です.もちろん,研究テーマ自体にはある程度の制限もありますが,博士課程にもなると自身でその取り組み方や方向性を決定できる場合が少なくありません.つまり研究の過程は多様であり,したがってそのアウトプットも千差万別です.寄り道をすることもできますし,納得のゆくまで一つの課題に取り組むこともできます.その結果,時には予想もしない大発見をするチャンスもあるでしょう.

“進路/環境を自在にアレンジし,決定できる”
自身の関心,あるいは需要に応じて,進路/環境を自在に決定できるのは,博士課程進学の大きな強みです.たとえば私の場合,京大在籍時は実験メインで研究を進めておりましたが,その後は東工大にて理論(計算科学)の分野で研究を行い,現在はその両方法を用いて,ドイツにて固体物理の研究を行っています.このように,進路を柔軟に選択することで,つねに熱意をもってたのしく仕事をすることができています.(ドイツは道が広く,散歩がとても良いリフレッシュになります!)

“研究活動を通じて,幅広いコネクションをつくれる”
研究を進めていれば,学会や共同研究等の機会を通じて,組織外とも自然にコネクションをつくることができます.このように形成したネットワークは,たとえば前述の進路選択の際にも,確実に活きてきます.(少なくとも私は,周囲の方々のサポートがあり,初めて柔軟な進路選択ができています.)また,同年代の研究者には,学会で会う度にとても良い刺激をもらえます.こうした交流を通じて新しいアイデアが生まれたり,共同研究が開始するのは,とても刺激的でワクワクする瞬間です.少しでも魅力を感じるものがあれば,博士課程進学を是非,積極的に検討してみてはいかがでしょうか.

廣本 正之 さん

hiromoto 平成18年 電気電子工学科卒業
平成19年 情報学研究科・通信情報システム専攻修士課程修了
現在 博士後期課程在学中

私は平成18年に電気電子工学科を卒業し,現在は京都大学大学院情報学研究科の博士後期課程に所属しています.小さい頃から電気電子回路やコンピュータに興味があり,それについて詳しく学びたいと思い大学入試の際には電気電子工学科を選びました.一言で電気電子と言っても非常に範囲が広く,学部では物理,化学に近い分野から情報,通信などの応用分野まで,電気電子に関わる様々な内容について学ぶことができます.その中で私は情報や通信,特にコンピュータについて興味があったため,それに関する講義を主に選択し,そういった内容を扱っている研究室に入ることに決めました.

私の所属する研究室は,大規模集積回路(LSI)に関する研究をしています.私達が日常使っている携帯電話やパソコンなどの情報機器の主要な機能は現在ではほぼ全てLSIによって実現されています.研究では,どのような回路を設計すればよいのか,そのような設計を効率良く行うためにはどうすればよいのか,さらに設計したLSIをどのように組み合わせれば実用的なシステムを作ることができるのか,といったことを検討しています.

このような研究は,大学だけでなく多くの企業や研究機関が現在活発に取り組んでいるテーマであり,テンポが速くて大変な反面,頑張り次第では学生であっても世の中にインパクトを与える研究成果を上げることができる,非常にやり甲斐のある研究分野だと感じています.実際,私自身も何度も国内や海外で研究発表を行い,様々な方々と知り合い,意見交換をすることができました.また,他の大学や企業との共同研究も活発に行われており,大学ならではの基礎研究から実際の企業製品に関わる内容まで,様々なプロジェクトに関わることができ,とても充実した研究生活を送っています.

電気電子工学科には私の研究室以外にも最先端の研究を行っている研究室がたくさんあり,電気電子について深く学び,世界の第一線で活躍したい人には最高の環境だと思います.特に,回路やコンピュータなどの情報,通信の分野に関して言えば,ここ最近,ハードウェア,ソフトウェアの両方を扱える人材が益々貴重な存在となってきており,社会のニーズも高まってきています.

電気電子工学科は正にその両方について学び,研究することができる場です.皆さんが大学,大学院で大いに力を付け,これからの世の中を牽引する研究者,技術者となることを期待しています.

藤井 昌宏 さん

fujii 平成17年 電気電子工学科卒業
平成19年 情報学研究科・通信情報システム専攻修士課程修了
現在 株式会社NTTドコモ勤務

私は株式会社NTTドコモで、アクセス装置(携帯電話をつなぐネットワーク側の装置)の無線部分の開発に取り組んでいます。2011年1月現在、一番ホットな話題は2010年12月にスタートした新サービス"Xi (クロッシィ):サービス当初は屋外エリア最大37.5Mbps、一部屋内施設最大75Mbps"で、私もXiの開発に携わっています。私が、無線通信業界で一番好きなところは、変化のスピードが速いことです。その中でも最先端の開発に関われることに、とても満足しています。

さて、これを読んでいるあなたが、今知りたいことは何でしょうか。私は、卒業生の進路とやりがいではないかと考え、最初の文章を書いてみました。(間違えていたら、ごめんなさい。)仕事で考えていることも同じで、世の中のニーズを上手くキャッチして、自分の持っている引き出しを駆使して、満足してもらえるものを作っていくことが大事です。

その点で、電気電子工学科は、半導体や電子回路等のハードウェア知識に加えて、情報理論やアルゴリズム論、プログラミングといったICT の基礎も学べるという、非常にバランスの良い環境だと思います。実際に、ニーズを満たすために必要なものは何でも取り入れていこうとする上で、電気電子工学科で学んだ広範囲な知識がとても役立っています。 もちろん、最終的にサービスを作り込む上で、自分の専門分野を持つことも大事です。

電気電子工学科では3年間バランス良く学んだ後で、4年目で専門性を高めていくことができます。私は、学部4年目と大学院の研究テーマとして、一番興味のある無線通信を選びました。そして今、私は、その無線通信業界の第一線にいます。新しいことが好きな学生は、ぜひ電気電子工学科を選んでください。そして、常に新しい情報を得るためにも、優れた国際感覚を身につけて欲しいと思います。私の場合、無線通信規格の国際標準化業務を進める上で、学生時代に国際会議に参加し、世界の中の自分を考えた経験がとても役立ちました。電気電子工学科は国際感覚を学ぶ環境が非常に整っていると思います。