山末耕平
ミュンヘン大学への研究派遣:関税障壁の衝撃
山末 耕平
京都大学ベンチャービジネスラボラトリー 研究員
(平成19年博士課程修了,平成16年修士課程修了,平成14年学部卒業)
私は、現在、ダイナミックモード原子間力顕微鏡のプローブに生じる非線形振動の制御に関する研究に携わっております。昨年のことになりますが、上記の研究課題に関連して、1ヶ月間、ドイツのミュンヘンにあるルートヴィヒ・マクシミリアン大学(通称ミュンヘン大学)に研究派遣され,実験に従事してまいりました。現地で実験を行うにあたり、私は周到に準備したつもりでしたが、現地では様々な予想外の事態に直面することになってしまいました。ここでは、その中から、実験装置をドイツ国内に郵送した際に生じた問題について記させて頂きます。
渡航するにあたり、私は携行した実験装置とは別に、予備の装置を国際郵便にてミュンヘン宛に発送しておりました。2つのルートをとったのは、昨今の航空事情を鑑み、(配線だらけで、一見,極めて怪しげな)装置を空港で没収される可能性を考慮したためです。ところが、この戦略は意外なところで裏目に出ました。間の抜けたことに郵送した予備装置に輸入関税を課されたのです。京都で郵便局員の方に言われるがまま、何の気なしに伝票に記入した装置の「商品価格」が「2万円」(部品代相当額)であったため、税率はその約15%、額にしておよそ20ユーロでした。税関に留め置かれた装置を受け取るには、とにかく、一旦は支払いが必要で、出国時にミュンヘンの空港で手続きをすれば返金するとの説明でした。自作装置に課税されるのは納得がいきませんでしたが、返金するとの説明を信じて、結局は仕方なく支払いました。ところが、出国当日、ミュンヘン税関発行の請求書を持って空港税関を訪ねると、全く取り合ってもらえないのです。横柄な職員との押し問答とたらい回しの間に搭乗時刻が迫り、結局20ユーロをドイツ政府に納税することになってしまいました。そもそもの原因は私の無知と調査不足にあるとはいえ、I give up !と職員に告げた後に感じた徒労は忘れられません。
実験そのものについても、残念ながら、滞在期間中に目的達成は成らず、未だ,途半ばの状況です。また、私の英会話能力の不足も痛感致しました。一方、南にアルプス山脈を望むミュンヘンの街並は大変美しく、気候も快適で、人生初めての下宿生活を大いに楽しむことができました。SimensやBMWが本拠を置く有数の工業都市でもあるためか、市内にはパーツショップが数多くあり、電子部品も容易に入手できます。ちなみに、滞在期間はサッカーのワールドカップ・ドイツ大会の開催期間と重なっており、会場に脚を運ぶ暇はなかったものの、街にいるだけで人々の興奮と熱狂を感じとれる幸運にも恵まれました。なお,参考までに、携行した装置に関しては、手荷物として空港カウンターで預けることで、何ら障害なく現地まで持ち込めたことをここに追記します。