地球大気計測分野(大気圏精測診断分野/橋口研究室)

電波・光・音波を用いた大気圏の精密測定と診断

21世紀は, 地球環境の時代と言われている. ところが, 地球環境変動を測定し監視する技術はまだまだ発展途上である. 本研究室では, 電子工学・通信情報の最新技術を地球大気科学に応用することに取り組んでいる.
地球大気環境の現状を知り, 将来を予測するにはまず精密な観測が必要である. そこで, 独創的な計測装置を開発して, 地球大気情報を収集し, 国際観測ネットワークを通じて得られる多量のデータと併せて解析を行い, さらに数値シミュレーションも合わせて, 地球環境変化の科学的解明に貢献することを目指している. 

教員

橋口 浩之 ( Hiroyuki HASHIGUCHI )

教授(生存圏研究所)橋口 浩之

研究テーマ

先端大気観測技術の開発
赤道大気レーダーによる赤道大気の観測研究
下層大気力学に関する観測的研究

連絡先

宇治キャンパス生存圏研究所S-444H号室
TEL: 0774-38-3819
FAX: 0774-31-8463
E-mail: hasiguti (at) rish.kyoto-u.ac.jp

西村 耕司 ( Koji  NISHIMURA )

准教授(生存圏研究所)

研究テーマ

連絡先

矢吹 正教 ( Masanori YABUKI )

助教(生存圏研究所)

研究テーマ

連絡先

研究テーマ・開発紹介

大気計測用レーダーの開発

波長数m(VHF帯)から波長数mm(ミリ波帯)までの様々な電波を用いることにより、大気に存在するさまざまな対象(乱流・電子・雨・雲など)を計測するためのレーダー技術の開発を行っています。
リモートセンシング工学分野と共同で、直径100mを超える大きなアンテナを備え、地表付近から高度数100kmの広い高度範囲にわたる大気現象の計測が可能な大型VHF帯レーダー(MUレー ダー・赤道大気レーダー)のほか、霧や雲粒を観測するためのミリ波帯のレーダーを開発してきました。また、地表から数kmまでの風速を観測するため、 1GHz帯(波長30cm程度)の周波数を用いた下部対流圏レーダー(写真)を開発しました。下部対流圏レーダーは気象庁のレーダー観測ネットワーク (WINDAS)に採用され天気予報業務に利用されています。

下部対流圏レーダー

GPSを用いた地球環境観測技術の基礎開発

今日の地球環境のモニタリングは, 人工衛星からの観測抜きには語れない. 例えば, 大気観測においても, 最近ではGPS受信機を搭載した低軌道衛星で大気を通過してきたGPS電波を受信し, その伝播(屈折)特性の解析から, 気温, 水蒸気量等のプロファイルを高精度かつグローバルに計測する技術(GPS掩蔽法)が国際的に注目されている. また, 低軌道衛星の位置・速度を超精密に計測することで, 地下水や氷床等の質量分布ならびに時間変動を測定することも可能になりつつある. 当研究室では, GPS掩蔽法を中心に, GPS電波を応用した様々な計測法の開発を行っている. 最近では, 山頂や航空機にGPS受信機を展開して, 日本周辺の大気の詳細な3次元構造を計測するための技術開発を, 実験を通して行っている. (図:人工衛星でGPS電波を受信する環境監視技術:GPS掩蔽観測(左側の低軌道衛星による受信)とGPS重力測定(右側の低軌道衛星による受信))

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電波・光・音波を用いた地球大気観測技術の開発

地上からのリモートセンシングもまた, 重要である. 新しい技術はまず地上観測測器で開発されるので, 技術開拓という意味では最先端である. 当研究室では, 電波・光・音波に関する, 最新の電子技術を用いた計測技術・測器開発を精力的に行っている. また, それらを配備した複合的観測拠点を国内外に展開している. 例えば, レーザーを用いたレーダーで気温や水蒸気, エアロゾルを測るライダー, 全天カメラで超高層大気を測るイメージャー, 音波と大気レーダーを組み合わせて気温を測るRASS(Radio Acoustic Sounding System)等の開発を行っている. 最近では初めてRASSを水蒸気測定に用いる手法を開発するなど, 精力的に研究・開発を進めている. (図(左):信楽MU観測所設置のライダー. 図(右)RASSの概念図)

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地球大気環境モニタリング

国内外での豊富な観測に加えて, 衛星観測などにより全地球的(グローバル)なデータ収集を行っている. 現在, インドネシア国内各地に, レーダーや光観測の機器を開発・設置している. これらにより, 地球大気変動のモニタリングと, 未知の大気現象の発見・解明に取り組んでいる. (図:GPS掩蔽観測により得られた大気重力波の全球分布)

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データ解析・可視化ソフトの開発, 数値シミュレーション

近年, 大気に関するデータは, 質・量ともに急速に増大しつつあり, 既存の処理ソフトでは対応しにくくなっている. 当研究室では, 次世代の汎用データ処理・可視化・シミュレーションのためのオブジェクト指向ソフトウェアの開発を行っている. また, 大規模並列型数値モデルによる大気現象のシミュレーションを行い, 観測とあわせて大気現象を探求している. (図:シミュレーションにより得られた降雨と上空の風の様子. )

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年輪気候学及びそのための画像処理法の開発

過去の気候を知る方法として, 樹木の年輪間隔等を解析する手法がある. まだ研究例の少ない熱帯域での年輪を用いた気候解析を行うべく, 画像処理手法も含めた基礎的な研究を行っている. (図:熱帯樹のひとつであるスンカイの断面)

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