電磁エネルギー工学分野

計算電磁気学の理論と応用

計算電磁気学とその応用  エネルギー・環境問題の重要性が増すなか,エンジン駆動車からモータ駆動自動車へのシフトや,自然エネルギーの有効活用が世界的に進められています。このような動向に即した電気電子機器の設計開発のためのキーテクノロジーとして,電磁界や電気電子材料の数理とそれに基づく計算機解析手法の研究を行っています。

教員

松尾 哲司 ( Tetsuji MATSUO )松尾 哲司

教授(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

  • 計算電磁気学
  • 磁性体のモデリング

連絡先

TEL: 075-383-2212
FAX: 075-383-2213
E-mail: tmatsuo[at]kuee.kyoto-u.ac.jp

美舩 健 ( Takeshi MIFUNE )

講師(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

  • 計算電磁気学
  • 並列処理

連絡先

TEL: 075-383-2209
E-mail: mifune[at]fem.kuee.kyoto-u.ac.jp

比留間 真悟 ( Shingo HIRUMA )

助教(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

  • 計算電磁気学
  • トポロジー最適化

連絡先

TEL: 075-383-2217
E-mail: hiruma.shingo.3w[at]kyoto-u.ac.jp
researchmap: https://researchmap.jp/shingo_hiruma
個人サイト: https://sites.google.com/view/shingo-hiruma

研究テーマ・開発紹介

電気電子機器に対するモデル縮約法の開発

電気自動車やロボットに用いられるモータには効率・出力の向上とともに高い制御性能が求められます。モータなど電気機器の高精度解析には大規模連立方程式の求解が必要で,このため,外部制御回路を含めた連成解析には膨大な計算時間を要します。現在,精度を損なうことなく電気電子機器を等価回路に置き換えるモデル縮約の手法が進展しています。モデル縮約の手法をモータ解析に応用することで,効率的なモータ設計手法を開発します。

有限積分法と時空間格子による計算電磁気学の枠組み

通常の電磁界解析では,空間と時間は別々に取り扱われます。しかし,電磁界の方程式においては,両者を時空間として統一的に取り扱うことが可能です。時空間で計算格子を構成すると,電磁界計算の自由度は大幅に向上します。そこで,有限積分法と時空間格子を用いた計算電磁気学の新たな枠組みの構築に取り組んでいます。

マルチスケール・マルチフィジクス計算磁気学

ナノオーダーの微細化が進む磁気デバイスの解析手法としてマイクロ磁気学シミュレーションの手法が発達しています。一方で,鉄芯材料が用いられるスケールは広い範囲にわたり,マイクロ磁気学シミュレーションでは解析できないサイズが殆どです。しかし,鉄芯材料のマクロ磁気特性は,材料内の磁区や結晶などのミクロな構造に由来し,この影響を明らかにするためにはマイクロ磁気学による解析が必要です。そこで,結晶粒や磁区のマイクロ磁気学的な振る舞いがマクロな磁気特性に及ぼす影響を記述し,マクロ磁気特性を計算機上で再現することができるようなマルチスケール計算磁気学の研究を行っています。特に,機械的な応力が磁性材料の特性に及ぼす影響を算出する手法を開発しています。この手法により,モータ製造時に鉄芯に加わる機械的応力とそれによる鉄損増加量との関係を予測することができます。

磁性体のベクトルヒステリシス特性のモデリング

上記のような鉄芯材料はヒステリシス特性などの複雑な磁気特性を持っており,それが電磁界計算の高精度化の妨げとなっています。そこで,鉄芯材料として広範に用いられている電磁鋼板のベクトル磁気ヒステリシス特性を精度よくモデル化する手法の研究を行っています。

陽的/陰的誤差修正と折畳前処理による高速線形解法

電磁界解析で広く利用されている有限要素法では,最終的に大規模な連立方程式の求解が必要となります。本研究室では,有限要素法で現れる連立方程式を効率的に解くための線形反復解法について研究を行っています。最近の成果としては,陽的/陰的誤差修正と折畳前処理があります。陽的/陰的誤差修正は,電磁界解析で広く利用されているA-φ法・マルチグリッド法などの手法を一般化した,反復解法の新しい枠組みです。一方,折畳前処理は,電磁界解析で頻繁に現れる特異な係数行列を持つ(つまり無数の解を持つ)連立方程式を効率的に扱うための手法です。

有限要素高周波解析ソフトウェアと並列処理

上の項目でも述べましたように,本研究室では有限要素法などで現れる大規模連立方程式に対する線形解法について研究・開発を行っています。その一環として,マルチグリッド法と呼ばれる線形解法と並列処理の活用を特徴とする高周波有限要素解析ソフトウェアの開発に取り組んでいます。

代数マルチグリッド法を用いた高速電磁界シミュレーション

マルチグリッド法は,有限要素法で現われる連立方程式に対する高速解法として,現在最も有力視されているものの一つです。ただし一般にその性能を十分に発揮するためには,扱う問題の性質・使用するメッシュの詳しい情報に加えて,マルチグリッド法の詳細について使用者が熟知していることが求められます。これに対して代数マルチグリッド法はマルチグリッド法の一種ですが,解法の詳細を熟知していない使用者にも容易に利用できることを目指した手法です。本研究室では,電磁界解析で広く用いられている辺要素解析に対する効果的な代数マルチグリッド法の開発を目標として研究を進めています。

電磁界解析のための拡張有限要素法の開発

近年のパワーエレクトロニクス技術の発達に伴い電磁機器を駆動する電源の高周波化が進んでいます。電源に含まれる高周波成分は,電磁機器内部に渦電流を誘導するためその評価と対策が必要とされています。しかしながら,渦電流は導電領域のごく表面にしか流れないことが知られており電磁機器のスケールに対して非常に小さな空間スケールに渦電流が流れます。これも一種のマルチスケール問題となっており,従来の方法では大規模な連立方程式を解くことになり計算コストが膨大になります。本研究室では計算コストを削減するための取り組みとして拡張有限要素法を用いた電磁界解析技術を開発しています。拡張有限要素法では事前知識を用いることでミクロな分布を表現することができ,精度を維持したまま未知数を大幅に削減することが可能となります。

電磁機器のトポロジー最適化

電磁界解析技術の発展に伴って解析技術を設計にどのように生かすかという設計支援技術に関する研究が盛んにおこなわれています。そのなかでも近年は形状の自由変形を許容するトポロジー最適化が注目されています。トポロジー最適化を用いることで設計者が意図しなかった革新的な形状が得られる可能性があります。本研究室ではモータの形状最適化を中心にトポロジー・パラメータ最適化の研究を行っています。