電磁回路工学分野

回路システムの研究

電磁回路工学は,電気電子工学の基礎分野である電気回路網学を基盤として,従来の電気回路理論を拡張した新たな理論構築とその応用を目指しています。回路システムはその構成要素である回路素子を組み合わせたものですが,昨今は小さな半導体チップの中に複雑な回路システムが入ってしまいます。その設計には,材料の特性,半導体回路設計と素子配置,チップ上配線やパッケージ・回路基板を含む周囲との電磁的結合,さらには周囲との相互干渉まで考慮する必要があります.また電力・通信・計算機などのハードウェアシステムの高度高機能化は,デバイス・回路・システムを一体化して扱う新しい理論体系を必要としています.本研究室では,この要請に答えるために,線形および非線形電気電子回路,アナログ及びディジタル信号処理回路,デバイスモデリング,高速ディジタルシステムやパワーシステムなどにおける実際的問題を取り扱い,課題解決のための現象・システムのモデル化,電磁気現象の解明,新しいシステム設計法とそのためのアルゴリズムのハード化,電磁結合を含む回路とシステムの設計法の開発などを目指しています.

教員

久門 尚史 ( Takashi HISAKADO )

准教授(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

  • 回路システムの基礎理論
    回路システムの基礎研究として,数学や物理の理論を回路網解析に応用し, 回路における多様な現象を明らかにするとともに,回路設計に有効な 手法を提供しています.
  • 電磁現象のモデル化
    現在の電気電子回路の発展を支える集中定数の回路理論は,電磁界を表現する Maxwellの方程式を洗練された形で近似することにより得られています.しかし, 最近では回路システムの動作周波数が高くなり,回路を分布定数線路や 電磁界の現象として扱う必要性が高まっています.そのような要請に対し, 新たな解析法の開発やモデル化に取組んでいます.
    • Maxwell方程式の回路モデル
    • メタマテリアルの回路モデル
    • エネルギーの流れの回路モデル
    • 電磁界理論によるコモンモードの進行波解析
    • 通信ネットワークのモデル化
  • 電力フローの設計
    電気回路においては電圧と電流で物理現象を考える場合が多いですが, これらと電力の関係はテレゲンの定理 で表現されます. エネルギー回路における電力フローを設計する手法について研究しています.

    e-LAN(Energy Local Area Network)におけるe-P2P(Energy Peer to Peer)

    • 送電線のパラメータ推定

    • 電力システムの事故検出

    • 逆散乱法による分布定数線路の同定

連絡先

京都大学桂キャンパスA1棟404号室
TEL: 075-383-2248
FAX: 075-383-2248
E-mail: hisakado@kuee.kyoto-u.ac.jp

イスラム マーフズル (Mahfuzul ISLAM)Mahfuz_Img

講師(工学研究科 電気工学専攻)

研究テーマ

  • CMOS集積回路を構成するMOSトランジスタの低周波数ノイズの評価及びモデル化

  • CMOSセンサ回路の低消費電力化

  • パワーデバイス経年劣化予測

連絡先

京都大学桂キャンパスA1棟402号室
TEL: 075-383-2246
FAX: 075-383-2245
E-mail: islam.akmmahfuzul.3w@kyoto-u.ac.jp
Homepage: http://cct.kuee.kyoto-u.ac.jp/

研究テーマ・開発紹介

回路システムの基礎理論

回路システムの基礎研究として,数学や物理の理論を回路網解析に応用し,回路における多様な現象を明らかにするとともに,回路設計に有効な手法を提供しています.現在,回路システムの基礎理論に関する研究として次のような研究に取り組んでいます.

  • グレブナ基底を用いた回路解析
  • 複素ホモトピーを用いたパラメータ空間での解探索法
  • 区間演算を用いた全解探索法
  • 精度保証付アルゴリズム
  • ラプラス変換,ウェーブレット変換等の応用
  • 可積分回路の解析

分布定数システム

現在の電気電子回路の発展を支える集中定数の回路理論は,電磁界を表現するMaxwellの方程式を洗練された形で近似することにより得られています.しかし,最近では回路システムの動作周波数が高くなり,回路を分布定数線路や電磁界の現象として扱う必要性が高まっています.そのような要請に対し,当研究室では新たな解析手法の開発やモデル化に取り組んでいます.

  • 電磁界理論によるコモンモードの進行波解析
  • 分布定数線路の故障点標定
  • 逆散乱法による分布定数線路の同定

アルゴリズムのハードウェア化

計算機で問題を解くということは,問題を回路の物理現象に置き換えて解を得るということです.柔軟なハードウェアであるFPGAの登場により,個々の問題の構造に対応した回路への置き換えができるようになってきています.そこで,当研究室では次のような研究に取り組んでいます.

  • FPGAを用いたアルゴリズムのハード化
  • 可逆回路による低消費電力回路の設計
  • グレイコードを用いたハード化
  • 非線形性を利用したハード化

電子回路のEMC設計に関する研究

電子回路の設計においては,電磁ノイズを周辺に放出せず,また外部からの電磁干渉の影響を受けずに動作する,EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁的両立性)性能の確保が重要となります.電子回路のEMC設計に関連して,下記の研究を行っています.

  • ディジタル回路と機器のEMC実装設計法
  • ディジタル回路の低ノイズ設計用LSIマクロモデルの開発

高速高周波回路のモデル化と設計法の研究

高速・高機能化する回路を設計するためには,回路網としての設計だけではなく,実際の回路を構成する回路基板や半導体パッケージなどの3次元構造により発生する電磁的な結合も考慮した設計が必要です.高速ディジタル回路は本質的に高周波回路とみなす必要があります.高周波においてはわずかな不要電磁結合が回路の特性を大きく変化させてしまいます.そこで,電磁特性も考慮した回路基板や半導体パッケージの電気的特性の解析手法と,回路設計手法の開発を行っています.