電子材料物性工学分野

ナノレベルでの新規電子・光機能の発現が期待される有機分子材料を対象として、次世代ナノエレクトロニクスデバイス創成のための基礎・応用研究を行っている。特に、ナノテクロジーの基幹技術である先進ナノプローブ技術(Advanced Nanoprobe Technology)、分子機能の発現に必要不可欠なナノスケールでの分子の操作・制御技術、さらには超薄分子膜の凝集構造解析を可能とする新規エネルギー分散型X線分析法など、分子ナノエレクトロニクスを推進するための基盤的かつ独創的技術の開発を行なっている。加えて、超高密度分子メモリーや有機半導体・有機EL、光触媒材料などの電子・光物性に関する研究を通して、革新的な有機薄膜デバイス・分子デバイスの実現可能性を探索している。また、最近では研究室独自の周波数変調(Frequency Modulation: FM)方式の原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscopy: AFM)を用いて、固液界面における水和構造や電気二重層の原子・分子スケール解析、バイオ・ナノ材料の分子スケール機能可視化に関する研究にも展開を広げている。

教員

小林 圭 ( Kei KOBAYASHI )

准教授(工学研究科 電子工学専攻)

研究テーマ

走査プローブ顕微鏡・ナノサイエンス

連絡先

京都大学桂キャンパスA1棟322号室
TEL: 075-383-2307
FAX: 075-383-2308
E-mail: keicoba@iic.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

先進ナノプローブ技術による単一分子計測技術の確立

単一/少数分子系の機能・物性を評価し、また操作・制御するためには、原子・分子分解能を有する実空間構造観察・物性分析技術の確立が必要不可欠となる。本研究では、分子間相互作用力を直接検出することで、あらゆる環境下で全ての材料に対して真の原子分解能をもつFM-AFM技術を活用し、局所光・電子物性計測を可能とする多機能プローブ分析顕微鏡への展開を図っている。これらの手法を機能性分子膜、Si半導体、カーボンナノチューブ、バイオ材料など、ナノスケール領域での電子構造がデバイス特性を支配する材料系の構造・物性評価に応用し、次世代ナノデバイスの開発指針を得ることを目的としている。

機能性有機分子の構造・配向制御とそのデバイス応用

電子材料としての有機分子は「柔軟性、軽量性、簡易プロセス、単一分子素子」など卓越した特徴を有し、ナノテクノロジー関連の新規技術を応用することで、革新的フレキシブル素子・ナノデバイス創成など従来にない新たな産業分野へと発展することが期待されている。しかし、有機分子には光・電子機能の異方性が存在し、それらの機能を十分に発揮させるためには、少数分子系や薄膜形成時の構造・配列制御が必要不可欠である。本研究室では、複数の機能性有機材料の集合体(主に薄膜)を作製し、その構造や電子物性をX線回折法や各種分光法、さらには研究室独自のSPM手法で評価しながら、分子配列・結晶構造・電極/分子界面を制御することで、有機分子材料の電子的機能を最大限に発揮させることを目的とした研究を行っている。

先進ナノプローブ技術による固液界面の原子・分子スケール評価

固液界面は、結晶成長、触媒反応など種々の化学反応、さらにはさまざまな生体機能が発現する活性場として重要な役割を担っており、近年、その微視的機構の解明に向けての研究が精力的に進められている。固液界面における水およびイオンの果たす役割は本質的に重要であり、界面上で形成される水和構造や電気二重層は、上記活性場の発現に直接的に関わっている。近年、本研究室での研究開発を発端に、急速に技術が発展し、溶液環境においても高感度・高分解能FM-AFMイメージングが可能となった。現在、固液界面においてAFM探針と試料との間にはたらく力を高精度に測定することで、固液界面系における水和構造や電気二重層を原子・分子スケールで解析する研究を進めている。

先進ナノプローブ技術によるバイオ・ナノ材料の分子スケール機能可視化

近年、高機能な新材料の創出に向けて、ナノ粒子、ナノチューブなどナノ機能構造体の構築・制御・解析が精力的に進められている。とりわけ、生体系においては、リガンド受容体系、イオンチャネルなど、主にタンパク質分子ベースの多くのナノ構造体が高度なナノシステムを構築し、細胞レベルでの信号認識・伝達、エネルギー変換や物質輸送など多様な生体機能に本質的な役割を担っている。こうした生体系におけるナノ構造体の機能解析は、生体機能の解明に向けて必須であるだけでなく、高度なナノシステムの構築に向けて、工学的観点からも重要である。本研究室ではFM-AFM技術、デュアルプローブAFM技術に基づいて、機能情報と構造情報を分子レベルで明確に識別し、生体膜上のさまざまな機能性分子の機能・構造を分子スケールで可視化する新たな分子機能イメージング法を開発し、これら生体分子の細胞生理機能における微視的役割を解明することを目標に研究を行っている。